救急車と救急病院は、蒼依が速やかに手配した。そこで診(み)てもらった結果、俺たち二人に大した外傷はなかった。その代わり、脳にかなりのダメージが認められた。
目覚めたときには二人とも、お互いの記憶だけを失っていた。
――これが、事故の日の顛末である。
* * *
あの日から約二年。
璃那が失った、俺に関わる記憶はいま、戻っているのか。それを確かめるのが、ここで再会する目的のひとつだった。
「こうやってトキくんと普通に話せてるってだけじゃあ、答えにならないかな?」
だが璃那はイエスともノーとも答えずに、反対に質問を返してきた。その答え方はずるい。
見たままをそのまま信じるなら、記憶が戻っていると思っていいのかもしれない。しかし、どうにもそうは思えないのだ。だからこそ当人に訊いたというのに。シンプルに、イエスかノーかで答えてくれたらいいだけなのに――……
いや、逆か?
「ひょっとして、イエスかノーかでは答えられない理由がある……の?」
半信半疑だったが、璃那は口元にだけ笑みを浮かべた。
「やっぱり、トキくんは察しがいいね。答えを言うのは簡単なんだ。けど、たぶん信じてもらうのが難しいと思ったんだよ」
「それって…………」
《 なんでまた、そんなふうに思うんだ? 》
璃那の言葉に疑問を感じると、アルテが口をはさんで、俺の気持ちを代弁してくれた。



