歩行者用の信号が青で点滅する中、こちらに向かって駆けてくる璃那に向かって、バイクが突っ込んで来ていたのだ。
そこからはもう、無我夢中だった。
このとき気づいた不自然な点を考察する余裕などあるはずもなく。その瞬間まで、璃那たちとはもう二度と会わない、関わらないと堅く心に決めていたことなど一瞬で吹き飛び、残ったのは単純な想いだけだった。
――助けなきゃ!
そのあと何をどうしたのか、まったく覚えていない。
無意識の行動だったためか、記憶を取り戻した今でも、そのときのことは思い出せないままだ。
ことの一部始終を見ていた悠紀と蒼依の話によると、俺は二度、宙を翔ぶように跳んで璃那を助けたらしい。
たぶん、無意識のうちにチカラを使ったのだろう。でなければ、幼いころから運動神経の乏(とぼ)しい俺に、一回の跳躍で数十メートル離れた璃那のところに着地する芸当など、出来るわけがない。
そのまま璃那を抱きかかえてふたたび跳ぼうとしたが、突っ込んできたバイクにはねられそうになり、それを避けようとしてバランスを崩してしまった。
あらぬ方向へ飛んでいって、建物の壁に頭を強打。結果、俺は璃那を横抱きするような格好で倒れていた。
ついでに大馬鹿野郎のライダーは、大きく道をそれて転倒したあと、道端の植え込みに突っ込んでいた。



