思い返せば、月夜にしかそれを使えなかった。
その理由を欲しがっていた俺は、自分がツキビトと恋に落ちたこの星の人間の子孫なのだと言われて、疑いもしなかった。
だからこそ悠紀にこう言われて、とっさに返す言葉が出てこなかった。
「実はあれには続きがあってね。ツキビトと、それと恋に落ちて結ばれたこの星の人間が対(つい)になるように、それぞれの子孫も対になるさだめなの。そして璃那ちゃんと対になるのが、兎季矢くんあなたなのよ。それでも、別れるっていうの?」
「…………」
返答に迷った俺は無言で踵(きびす)を返し、
「今さらそんなこと言われても、もう決めたことですから」
やっと出てきたこれだけを告げて、足早にカフェを出た。
外は、月が出ていた。
平日ということもあってか、辺りの交通量は少なく、人通りはない。
横断歩道を渡りきったそのとき。
背中越しに、あの凜とした涼やかな声がした。
「トキくんっ!」
声の主が璃那であることはすぐにわかった。しかし俺は振り返ることなく、駅を目指して歩みを進めた。
すると間もなく、二つの悲鳴が同時に聞こえた。
「璃那ちゃんっっ!」
「璃那姉さんっっ!」
声は悠紀と蒼依のものだったが、切羽詰まった叫びを無視出来ずに振り返ると、俺はその光景に目を疑った。



