璃那は放心していたのか、虚(うつ)ろな瞳でテーブルを見つめたまま。蒼依は憤(いきどお)りに身を震わせて。それぞれ言葉が出てこない様子だったが、悠紀は違った。明らかに怒っていたが、理性でそれを抑え込みつつ、諭すように俺に問いかけた。
「ねえ兎季矢くん。昔、璃那ちゃんがあなたに打ち明けたこと、覚えてる?」
「……ええ。ちゃんと覚えてますよ」
忘れるわけがない。
昔、病棟の屋上で、璃那が自分のチカラを明かし、俺も自分のチカラを明かしたあとで璃那が打ち明けた、とんでもない事実。
「『信じてもらえないかもしれないけど。
わたしとその家族は、月の内部に存在する都の一族、ツキビトの血筋に連なる者なんだ。
不老不死の身でありながら、この星に降りてこの星の人間と恋に落ちたがゆえに不老不死を失くしたツキビトの子孫。
だから、月明かりを源としたチカラが使えるんだ。
そして、そのツキビトと恋に落ちたこの星の人間の子孫もまた、ツキビトと同じチカラの種か苗を、生まれながらにして持ってるんだよ』ですよね」
「そう、それ」
そして俺こそがそのツキビトと恋に落ちたこの星の人間の子孫であり、俺たちの出逢いはそれを理由に璃那の家族によって仕組まれたものであって決して偶然ではなかったことも、そのときに明かされた。
チカラを持たない人には、まるっきり漫画みたいな絵空事でとても信じられない話だろう。しかし俺には、漫画みたいな絵空事だと断じることは決して出来なかった。璃那と出逢う前から〝テレパス〟を使えて、自分は人とは違うんだと疎外感を持っていただけに。



