会わなくなってまだ一ヶ月も経っておらず、まだ自分の中の気持ちに気づいてもいなかったからか、璃那の〝声〟が聴けて嬉しくはあったものの、ものすごく嬉しいというほどではなかった。

《今夜は満月で、綺麗な月夜だったから、きっとトキくんも観てるんだろうなと思ってさ。ダメ元でトキくんの〝声〟を探してみたんだけど。当たりだったみたいだね。窓から観てるの?》

〝テレパス〟は言ってみればラジオなどの受信機のようなもので。発信は出来ない。相手の心の声を受信し合って、このような対話が出来る。

誰彼構わず受信してしまうのではなく、ラジオのチューニングのように聴き取りたい相手の心の声だけを探って聴き取るのだが、蒼依はそれが出来ないので人混みを苦手としている。

《ううん、屋根の上》
《そっか。じゃあ、わたしと同じだね》

チカラの源が、満月当夜とその前後に最も強まるということは、このときに知った。

《空にまん丸お月様が見えてたら、距離的な制限は無いに等しいんだよ》
《お互いが観てる月が、アンテナの役割をしてるってこと?》
《アンテナかぁ。蒼依はお月様を『〝テレパス〟を反射させる鏡』って言ってたけど、そうとも言えるかもしれないね。相変わらず、理解が早くて助かるなあ。話が通じるって楽しいね》

もうノロケにしかならないのでこれ以上は端折(はしょ)るが、それから月に一度はこんなふうに、ひと月の間にあったことを〝遠隔テレパス〟で話すようになり、そんな日々がしばらく続いた。悠紀や蒼依と知り合ったのもその期間だ。