もう時効だと開き直ったからか、悠紀は当時の裏話をあっさりバラした。

「依頼者って言ったって……繋がりは? 悠紀姉さんが都さんと知り合う前の話しですよね?」
「ううん? あれ、これも言ってなかった? みゃーこ先生はね、母さんの教え子なのよ?」
「……初耳です」

世の中って、どうしてこう狭いのだろう。

だが、有り得ない話ではない。悠紀たちの母親は、俺がかつて入院していたころに医大で婦長をやっていたし、旭川医科大学看護学科主任講師の経歴も持っているのだから。

「と言うかむしろ、寝耳に水です」
「ああ。あれって目覚ましにちょうどいいよねー」

いきなりの話題の飛躍。悠紀をよく知らない人なら、ここで戸惑うか『そういうことじゃなくて』と返すところだ。それでも、慣れれば俺みたいに、

「実際にやったことあるんですか?」

と、まったく気にせずに飛躍した話題にそのまま乗っかることが出来るようになる。慣れというのは恐ろしい。

「ううん。やられたことは何回もあるけど。誰からか聞きたい?」
「大丈夫です。想像に難くありません」

一緒に生活していたころ、蒼依がほぼ毎日、水を汲んだヤカンを持って悠紀を起こしに行っていたからな。

「そんなこともあったわね」

当の本人が他人事のように言う。やられた方は覚えていても、やった方は覚えていないものだ。真逆の場合もあるけれど。