顔は犬っぽいのに愛称は猫みたいだなと苦笑したのは後日のことで。このときは、ただただ悩んだ。
普通の子供なら、友好的な担当看護師とフレンドリーに接するのはどうってことないだろう。だが、決して友好的でも社交的でもなかった子供の俺にとっては、この上ない難問だった。
そこで助けを求めるように天を仰ぐと。星たちの瞬きが、まるで俺の背中をぐいぐい押してくれているように感じた。
「……わかりました。これから、よろしくお願いします」
そう言って、差し出されていた手をそっと握(にぎ)った。すると都は俺の手を強めに握り返して、なんと条件を付け足したのだ。
「あ、ですます調も禁止ね? 友達なんだから」
「ぅ……。わかりま――わかったよ。これからよろしく、みやこさん」
友達同士なのだからですます調は不要。一応、道理は通っていた――のだろうか。
いま改めて考えると疑問だが、少なくとも当時の俺には反論の余地が見つけられなかったので、付け足された条件も渋々呑(しぶしぶの)み、その代わりに握った手に力を込めた。
ささやかな抵抗のつもりだったのだが、都はそれを面白がって、もう片方の手を握手にかぶせるようにして俺の手を両手で握り、楽しげに言った。
「うんうん、やれば出来るじゃん。こちらこそよろしく♪」



