正直、ウィンクしながらどこかで聞いたセリフを言った都は可愛かったが、それ以上に俺は呆れた。非常に魅力的な提案なのは間違いなかったが、たとえ権限があるとしても、タダでというわけではないだろうと思ったからだ。
「……何が条件ですか?」
「あらら、そう来たか。ときや君は本当に察しがいいね」
「ぼくの察しが本当にいいのなら、鍵の束を見せられた時点ですべてを察したでしょうし、看護師さんには負けます」
「落ち着いてるし、ボキャブラリーも、小学三年生にしておくのがもったいないほど多いわよね」
「小学校に上がる前から、本の虫でしたから」
「そっかぁ……。まあ、今はそれはいいや」
「?」
どこか引っかかる言い方だったが、それを訊き返す間もなく、都の話は続いた。
「これはルール違反だからね。ときや君が察した通り、おねーさんもタダで見逃してあげるワケには行かないわ。だから条件として――」
「……条件として?」
「私と友達になろう♪」
「…………」
笑顔で差し出された手を見つめたまま数秒間、何を言われたのかまったくわからなかった。
「はい?」
「だからこれからは、おねーさんのことは『看護師さん』でも『松下さん』でもなくて、『みゃーこさん』か『都さん』って呼ぶこと。それが条件♪」
「……それが条件、ですか……」



