人間は、息を吸うと緊張し、吐くとリラックスするらしい。
文句の代わりに息を吐くと、そむけたままのアルテの横顔に意地の悪い笑みが浮かぶのが見えた。
その瞬間、次に何を言うのかがわかってしまった。
そうか、そこを訊(き)くのか……まあ、そりゃそうだよな。
《 告白の答えだけでなく、告白そのものも知りたいんだが? 》「断固拒否する」
《 なんでだよ! 》
振り向きざまに投げられた想定通りの問いを、脊髄(せきずい)反射ばりのスピードで俺は打ち返す。
するとアルテは、食ってかからんばかりの勢いで鳥かごの柵を前足でつかみ、俺に抗議した。
「恥ずかしいからに決まってるだろ。どうしても知りたきゃ、告白された方に訊け」
いや、それもダメだろ。
淡々と言い捨ててすぐさま、自ら墓穴を掘ったことに気付いて口を抑えたが、時すでに遅し。
ぽふ。
《 おぉ、なるほど。その手があったか 》
いったい何処でそんな仕草を覚えたのか、アルテは立てて握った一方の前足でもう一方の肉球を叩く。
捨てた言葉を拾う間もなかった。
要らんこと言ったなあ……。



