麻宮家の長女である悠紀は、俺の知る限り、普段は常に笑顔を絶やす事がなく、基本的にゆっくりと話す。
それゆえに、のんびりおっとりした印象を見る人に与える。
そして同時に、何を考えているのかさっぱりわからないという印象も与えるのだ。
事実このひとは、突然何の前振りも前触れもなく、突拍子もないことを言い出すことが珍しくない。
それを考えれば、外見のイメージに似つかわしくない単語が突然このひとの口から出てきたとしても、何の不思議もない。
「――でね? どうしてそんなお店を始めたかっていうと。今度出すゲームの、キャンペーンなのよ」
そう。たとえばこんなふうに。って、
「ちょっと待ってください。なんですって?」
今度出すゲーム?
「昨日、電話で言ってたでしょ。あたしたち、会社を立ち上げたのよ」
「そう言えば……」
昨日、確かにそんなことを聞いた。そもそも今夜のことも、その電話が発端なのだ。
「会社を立ち上げましょうって言われた時は、大して驚きやしなかったんだけど、それが何の会社か聞いたときは、さすがに開いた口がふさがらなかったわ」
「そう言えば俺も、まだ何の会社かは聞いてなかったな。けど二人の得意分野とか、いまの話の脈絡からすると……ゲームメーカー、それも、パソコンゲームの開発会社……とかか?」



