むーんりっと・りゆにおん(仮)



相変わらず生真面目で、指摘が細かい。

「なんですって?」

声と同じくキツく冷やかな視線で、刺すようにこちらを睨(にら)む。昔は体が麻痺したように身がすくんだが、そのうち耐性がついて、いまとなっては痛くもかゆくもない。

「何か聴こえたか?」

蒼依は〝テレパス〟のオン/オフを意識的に操作出来ない。

聴き取るものが心の声であることを除けば、歩く盗聴器と大差ない。

そのため蒼依の前では、迂闊(うかつ)なことは思うことすら出来ないのだ。

「蒼依ちゃんのいけず。私、蒼依ちゃんのそういうとこ嫌いっ」

「いいわよ別に。妹をちゃん付けするような姉に好かれても嬉しくないもの」

また始まった。

この二人が顔を合わせて、口論が始まらなかった場面を見たことがまずない。

犬猿の仲――というより、犬猫の仲と言った方がしっくりくる。

毛並みと愛想と面倒見がいいコリー犬と、小柄で無愛想で高飛車なアメリカンショートヘア。

「あぁはいはい。話はだいたいわかりました。けど、メイドと巫女が一緒にする仕事って一体なんです?」

文字通り二人の間に割って入り、口論を手で制す。

ひとまず場を落ち着かせてから質問すると、悠紀は口元に指を置いて思案を始めた。

「んーとねぇ……」

年上の女性にこう言うのはなんだが、悠紀の思案する姿はとても可愛いらしい。

大人顔でこういう仕草をするので、可愛らしさが際立つのだろう。