「なんだ、あるのか?」

《 う。……エンキョリレンアイの経験は……ない 》

痛いところを突かれたのか、答えに詰まって言いよどむ。

「はんっ、微妙な答えだな」

《 鼻で笑うな! 》

恥ずかしさをごまかすように怒鳴る。

「お前だってさっき、俺の経験則を鼻息であしらっただろう? お返しだ」

こんなに人間臭い猫はおそらくお前以外にはいないだろうし、見ているぶんにはすごく楽しい

――なんてことは、口が裂けても言わない。

言ったが最後、顔を爪アートのキャンバスにされるのがオチだ。

「けど、お前が言いたいこともわかるよ。一理ある」

《 ……ふん、まあいい。これ以上、よく知りもしないエンレン談義などしてもつまらん 》

「なっ……」

自分から始めた話であるのにもかかわらず、賛同の意思を見せたとたん、興味は失せたとばかりに言い捨ててそっぽを向いた。

それを見た俺は文句が喉元まで出掛かったが、寸でのところで飲み込んだ。

《 と言うかだな 》