「ちっ」
《 そんなこったろうと思った 》
この機に乗じてちょっとアルテをからかってやろうと思ったのだが、目論(もくろ)みは脆(もろ)くも失敗に終わった。
こういうふうにお姉さん風を吹かすところは、俺のよく知る璃那そのものなんだが……。
そんなことを考えているうちに、璃那先生のチカラ講義が始まっていた。
「あのねアルテ。〝ミラージュ〟も、〝テレパス〟みたいにチカラのひとつで、蒼依(あおい)っていうわたしの妹が名付け親の、超高速移動能力の仮称なんだ」
《 仮称かよ 》
「詳しい原理はわたしには難し過ぎてさっぱりなんだけどね。鏡みたいな能力だからなんだって」
ということで、俺が真面目に補足する。
「〝ミラージュ〟を使うと、一時的に特殊な亜空間に入り込む。そこは鏡のような世界で、時間の流れが止まって見えるほど極端に遅く、相対(あいたい)する方位が入れ替わっているんだ」
《 相対的に高速移動出来る代わりに、相対する方角が入れ替わっている亜空間……なるほど、そりゃ難儀(なんぎ)な能力だな 》
「方位が逆転してるのが難点と言えば難点なんだけど、慣れてしまえばどうってことないからね。で、〝モメトラ〟っていうのは」
「ラテン系の能力者が名づけた『もめてーら』が訛(なま)ったものだ」
「《 トキくんは黙ってて 》」
「はい」



