「…………」
それは璃那にとって、どれくらいの久しぶりなのだろうか。
あのときのことも、ちゃんと記憶にあるのだろうか。
璃那に過去のことを持ち出される度に、どうしてもそれが気になって仕方がない。
「それなのに姉さんの思いつきに付き合わされて、太平洋のど真ん中でお月見なんてしてたものだから〝ミラージュ〟を使って超高速でここに向かう羽目になったし、それでも間に合わなくて結局〝モメトラ〟まで使っちゃった。このチカラは、無尽蔵に使えるわけじゃないのにさ」
《 みらーじゅ? もめとら? なんだそりゃ 》
璃那の愚痴りに混じった聞き慣れない単語を、アルテが訊き返す。
尻尾を見ると、残像が残るほど、疑問符が激しく揺れまくっていた。
しかし璃那が答えるより早く、俺が答えた。
「〝ミラージュ〟は英語で言う蜃気楼(しんきろう)や、某国空軍の超音速戦闘爆撃機のことだ」
《 それくらいは知ってるが、そんなモノ何処にも見当たらないぞ? 》
「知ってるんだ。ていうかトキくん。アルテにウソ教えちゃダメじゃない」
「嘘は言ってないぞ」
ミラージュが英語で言う蜃気楼や某国空軍の超音速戦闘爆撃機のことを指すのは、本当のことだ。
「そうじゃなくって。わたしたちの言う〝ミラージュ〟はそっちじゃないでしょってことだよ」