「つまりだな。告白そのものに対してはOK、だけど恋人同士になるのはNGってことだよ」
《 それくらいは俺様にも理解出来る。理解は出来るが納得がいかん。お前はそれで納得したのか? 》
「したさ。というより、するしかなかったんだ。このあと二人は、北海道と首都圏に離ればなれになってしまうんだから」
アルテには、いまのように何かしら疑問を持つと尻尾をハテナマークのように曲げ、解決するとビックリマークのようにピンと張るクセがある。
これが意外と可愛いのだが、以前それをコイツに言って、顔を爪アートのキャンバスにされた過去がある。
以来、可愛いと思いはしても口には出さないようにしている。
《 別に離ればなれでも、エンキョリレンアイってやつをすれば良かったんじゃないのか? 》
猫の世界には遠距離恋愛など存在しないのか、言い難そうだ。
「彼女がそういうのを嫌がったんだよ。告白する前も、けっこうな遠距離だったから」
《 どっちも遠距離に代わりないならなおさら疑問だぞ。ただ単に距離が延びるだけの話だろ? 》
「物理的な距離が延びると、心の距離も延びるんだよ」
《 はんっ 》
真面目に経験則を言っただけだったのだが、何をキザったらしくばかなことを言いやがるとでも言いたげに、アルテは鼻息で嘲笑(あざわら)った。
「本当のことだぞ?」
《 そうなのか? 》
「そうなんだよ。ま、恋愛経験自体がないお前にゃわかるワケないよな」
《 む。失敬な 》
また眉根が寄った。
さっきとは違い、嫌味を言われて癇(かん)に障(さわ)ったようだ。



