「アルテの場合は少し特殊で、発声したものが〝声〟になって聴こえるんだ。それからひとつ、制限がある」

「制限?」

「そう。コイツの〝声〟は、コイツと波長が合わないと聴き取れない」

「へぇ…… じゃあ、聴き取れてるから、わたしとも波長が合うってことなんだね」

《 そうみたいだな 》

「そっか。じゃあ、しっかり自己紹介しなきゃ」

璃那は、白いサーフボード状の物体の上で座り直して居住まいを正した。

「初めまして、わたしは――」

《 知ってるよ、佐藤璃那だろ 》

「え?」

持ち前の人懐っこい笑顔で名乗ろうとした自分より早くアルテに名前を言われ、璃那は目を白黒させた。

《 あんたたち三姉妹のことは、ここに来る道中にトキヤから聞いた 》

「ああ、そうだったんだね。でもいまは違うから、改めて。――いまのわたしは麻宮璃那っていうんだ。元々住んでた麻布の『麻』、いま住んでる大宮の『宮』って書いてアサミヤ。瑠璃(るり)色の『璃』に那覇市の『那』でリナ、だよ」

《 苗字が変わってたのかよ 》

アルテは、璃那にではなく俺に訊いた。

「親御さんが離婚したんだよ。言わなかったか?」

《 聞いてない、聞いた覚えもない 》