《 かごはイヤだ、膝を貸せ 》
「あいにく、猫に膝枕させるシュミは持ち合わせていない」
《 枕じゃなくて座布団だ 》
「じゃあなおさらだ」
《 四の五の言ってねーで―― 》
《ねえ、ちょっといいかな》
いつ終わるとも知れない押し問答に、別の〝声〟が遠慮がちに割り込んで来た。
「っ!」
《 なにっ? ぅわっ! 》
驚いた俺は声を上げる間もなく、塊の首根っこを離してしまった。
《 離すなら離すって言ってからにしろっ 》
「わかった、離すぞ」
《 もう遅いわっ! 》
本当に地上に落とされるとは欠片も思っていなかったのか、膝上からの非難には震えも怯(おび)えもなかった。
ベタなボケで軽くいなすと、俺はアルテとは別の〝声〟の主――璃那に向けて、頭を下げる。
「話の腰を折っちゃったよな。ごめん」
「ううん、そうじゃなくて。ひょっとしてそのコも……〝テレパス〟を使えるの?」
半信半疑でおそるおそるといった感じで、俺に訊(たず)ねる。
璃那がそう思うのも無理はない。
俺もアルテと初めて会った時には、まったく同じことを思った。



