「……まあ、今度から気をつけてくれれば。再会出来た嬉しさは、充分過ぎるほど伝わったしね」

「ほんとっ?!」

見るからに落ち込んでいる姿を見かねて、ため息まじりに本音を言うと。

薄翠色の月は弾かれたように光を取り戻し、輝くような笑顔を見せた。

「――あ、ああ。それにその…… ……また逢えて嬉しいのは…………だし」

本音に対する予想以上の効果に一瞬返事が遅れ、あまりの気恥ずかしさに言いよどんだ。

顔が火照っている自分に気づくとだんだん声のボリュームが落ちて行って、後半の「俺も同じだし」は声になっていたかどうか。

「ほんとにほんとっ?!」

何とか璃那の耳には届いたようだ。

笑顔がさらに輝きを増し、ふたたびゼロ距離まで迫った。

「嘘は言わない。だから近づき過ぎないで」

「あ、耳まで真っ赤。照れてる?」

「悪い?」

あいにく俺は、初恋相手にお互いの鼻先が触れ合いそうなほどの至近距離で見つめられても顔色を変えられずにいられるほどの演技力は、持ちあわせていないのです。

《 ……なぁ 》

赤面と笑顔を向かい合わせていると。

聞きようによっては猫の鳴き声そのままの〝声〟が、二人の間を割って入ってきた。

「ん?」

「ん? ――わっ!」

俺は〝声〟のした方へ振り向いただけだったが、璃那は振り向いた直後、驚いて上体をのけ反らせた。