子供のころの面影を残す童顔だが、さすがに子供のころと比べると大人びた印象がある。

どことなく、二年前よりもさらに大人っぽくなった気がする。

ほとんどすっぴんと変わらないナチュラルメイクの中で、唇に薄くひかれたさくら色だけがひときわ目立つような気がするのは、口元に小さなほくろがあるのを知っているせいだろうか。

「そんなことより。さっきの挨拶代わりのハグ。タッチセラピーを兼ねたつもりだったんだけど……刺激が強過ぎたかな」

バツが悪そうに苦笑いしながら、指で頬を掻く。

「タッチセラピー?」

「うん。人肌には人を癒す効果があって、握手したりハグしたり、触れることで人を癒せるんだって。知らない?」

「聞いたことはある」

少なくとも、反論を阻止するつもりでやったのではなかったらしい。

「けど、強過ぎたのは刺激じゃないよ。もう昔のようなリアクションをするほど子供でもない。癒そうとしてハグするなら頭じゃなく、力加減も忘れないで欲しいな」

「あ、あははははー……」
「………………」

「……ごめんなさい」

璃那は後頭部に手をやって、まるでほとんど欠けていて弱々しく光る月のように、乾いた笑いでごまかそうとした。

が、俺の冷やかな視線に負けて完全に光を失った。

こっちは本気で危うく死にかけるところだったのだ。

冗談でも、笑って済まして欲しくはない。