「ひとの恰好をとやかく言うわりに、自分だって大してめかして来てないじゃないか」
ラテン語で月を表す愛称を持つ璃那はさながら、薄翠色の月だった。
肩先までの黒髪には何の飾りもアレンジもない。
淡いエメラルドグリーンのカーディガンの中には真っ白いブラウス。
首にも耳にも、アクセサリーの類いは一切着けていない。
シンプルな装いがいかにも、派手に着飾るのを苦手とする璃那らしかった。
「靴も履いてないし」
オフホワイトの膝丈フレアスカートからすらりと伸びた脚の先は裸足だった。
「そ、それは、ずっと空の上にいるって言ってたからっ! それに服だって、見た目は地味でも素材的には一張羅なんだからねっ!」
からかうように言うと、璃那は横座りしている白いサーフボードのようなものをばんばん叩きながら反論した。
それにあわせて、ツヤのある髪が軽やかに揺れる。