出逢いの晩からあくる日、十七夜月の夜。

消灯時間後に病室を抜け出るときにいろいろあって、ゆうべ、璃那と出逢った時間よりも遅れてしまった。

それでもどうにか屋上に出る扉の前までたどり着いて、おそるおそる扉を開くと目の前には――

誰もいなかった。

外へ出て辺りを見渡すと、病室から窓越しに見たほどには曇っておらず、風もなかった。

ただ、雲は止めどなく流れていた。ここは無風でも、上空には強い風が吹いているらしい。

ポケットから方位磁針を取り出して、月の方位から、時刻を算出する。

予想外の出来事があったとはいえ遅刻してしまったことを後悔しながら、諦め半分淡い期待半分で、ゆうべ璃那がいた辺りに目を向けた。

しかし予想通り、そこに璃那の姿はなかった。

遅刻したことに怒って帰ってしまったのかも…………

とため息をついた、そのとき。

「――ぅわっ」

突然、背後から視界を覆(おお)われた。