事態はわかった。
しかしなぜ、彼女はそうしたのだろう。
俺の反論を阻止するつもりだった?
いやそれなら、手で口をふさげば済むことだ。
それに、アルテはこの状態を羨ましいと言ったが、それはとんでもない思い違いだ。
なんなら、一度やられてみればいい。
そうすれば、見るのと体験するのとでは大違いだとわかるから。
もしこれが、包み込むようにやわらかい抱擁(ほうよう)、というかハグであったなら、心地よさを感じる余裕もあったかもしれない。
しかしこれは、ハグではなく締めつけだ。
力加減が完全に無視されている。
ヘッドロックを極められているのと大差ないこの圧迫感は、体験してみないとわからないだろう。
そもそも彼女は、腕力が半端ないのだ。
「……………………」
ちなみに。
聞くところによると人間は、息が出来ない状態が三十秒程度続くと、窒息による急性呼吸困難を引き起こすらしい。
マジで窒息死する一歩手前。
まさしくいまの俺の状態がそれだろう。
それはそれは息苦しく、出来ることならじたばたと激しく暴れたい。
しかしこの状態のままそれをすると、不用意に彼女の体に触ってしまいかねない。
それは避けたい。
となると―――



