「初恋の相手と二年ぶりに会うっていうのに、ずいぶんラフな恰好だね」

凜とした涼やかな響き。それだけで、誰の声なのかわかる。

「これでも、自分なりにお洒落して来たんだよ。それとも、白いタキシード着てバラの花束でも持って来りゃよかった?」

そんなに地味かな、この服。

あんまり気合い入れてめかし込んでも逆に引かれるかなと思って、それでもけっこうカジュアルを意識して来たのだけど。

なんて思いつつ、口の両端に笑みを浮かべながら声のした方を向くと。

月と俺との間に彼女がいた。

「それは願い下げだね。きっと見た瞬間にとんぼ返りしちゃうよ」

彼女は箒ではなく、サーフボードのようなものに横座りして、俺の姿を月からさえぎるように浮遊していた。

ただ。