「有り得んだろ」

《 そうかもしれんが。いままさに常識では有り得ないことをやってのけているヤツがそれを言うか? 》

針のように細めた視線で、刺すようにこちらを見た。

ちなみに俺たちはいま、ヘリコプターのように中空にホバリングさせた箒に座っている。

「このチカラと神霊の仕業(しわざ)を一緒にするなよ」

《 ある意味一緒だろ――って待て。神霊の仕業だと? 》

「ああ。この経営破綻劇の裏には、とびきりの都市伝説がくっついていて――」

興味深げにせわしなく揺れるクエスチョンマークに答えようとした、ちょうどそのとき。

月明かりが翳(かげ)り、間もなく頭上から声がした。

「こんばんわ、トキくん。初恋の相手と二年ぶりに会うっていうのに、ずいぶんラフな恰好だね」