《 そのうちだと? ここだって観光地なんだろ? また来るまでの間に観光開発の手が入ったりしないか? 》
アルテの心配はあながち的外れではない。
どこの町にも一度は、観光絡みの土地開発の話が持ち上がる。
俺の住む町だってそうだった。
しかし。
「その心配はない」
《 言い切ったな 》
「そんなのは昔の話だし、もし観光開発の話が進んでそれが現実になっていたら、俺はここを彼女たちとの再会の場には選ばなかったよ」
開発されるということは人工物が造られるということであり、それだけ自然が壊されるということだ。
地上の自然はもちろん、天上の自然も。
しかし、ここはそうならなかった。
「ここも一度は開発されかかったけど、ダメになってるんだよ」
《 何かあったのか? 》
「なんでも――」
工事を始めたあたりから急に、その関連会社の業績が思わしくなくなった。
それで工事を続けることが難しくなり、それでも無理して工事を続けようとしたのが悪かったのか、最終的には大元の会社まで経営が破綻(はたん)。
「――それ以来、開発話はお蔵入り。誰もここに手を出そうともしなくなった」
《 不思議なこともあるもんだな 》
「まったくだ」
《 もしかしてここは、何かに護られているのか? 》
「何かって? まさか開発計画がポシャったのは、山神様の祟(たた)りかもしれないとでも言うつもりか?」
《 ああ 》
アルテの突飛な発想に呆れるように言ったが、実を言うと俺も、そう思ったことはあった。
しかし。



