《 ――待てよ 》
「ん?」
《 それってつまり、どういうこった? 》
涼やかな風が肌に心地いい初夏の夜、昔話をしていると。
鳥かごの中の仔猫がそれをさえぎった。
六月。
涼やかな風が肌に心地いい初夏の夜。
まるで月や星を観るのを邪魔するように、空は低い雲に埋め尽くされていて地上からは何も見えない。
それはここからだと、真っ白な大海原のように見える。
星たちは、いつもなら空いっぱいに散らばって、目に騒がしいほど瞬いている。
だが今夜は空に点々と散らばって、控えめに瞬いている。
その様子が、皓々(こうこう)と輝く月に遠慮しているように俺には思えて、笑ってしまった。
星たちをおとなしくさせているつもりのない月は、パッと見、満月のように見える。
しかしよくよく観ると、細い眉の分だけわずかに欠けている。
満月からひと晩過ぎた十六夜の月。
雲海が十六夜月に照らされた蒼皓(あおじろ)い世界を、俺は箒(ほうき)に跨(またが)って飛んでいた。