「ああ」

地図に名前のないこの丘は、芦別市の郊外にある。

俺たちは車より断然速い移動手段を使ったにもかかわらず、結局その倍以上かかってしまった。

まあ、道なき道を飛んでくるのに、スタートダッシュ以降ずっとスクーター並みのスピードしか出さなかったのだから、当然の結果かもしれない。

十六夜月夜なのだから、箒のコントロールだけに意識を向けていればF1カーくらいのスピードで飛ぶことも出来たのだが――

「話に気を向け過ぎたかな」

《 気にするな。むしろ鳥かごを引っかけたままで時速三百キロも出されたらこっちの身が持たん 》

「それもそうだな」

その光景を思い浮かべて、苦笑する。

《 それに、昔話のおかげで道中退屈しないで済んだし、三姉妹に会うのが楽しみになったぞ 》

「それは何より。だがもし、彼女にあの質問をしたら」

《 あの質問? ――ああ、告白そのものの内容か? 》

「そうだ。もしそれを訊いたら、答えを知る前にお前を森へ叩き落として、カラスの餌(えさ)になってもらうからな」

《 ひでえ 》

どうせ脅しか冗談だとでも思ったのか、アルテはにししと歯を見せて笑った。

俺は本気だったのだが。