「このことをきっかけに、これからずっとわたしの隣にいてほしい。わたしをトキくんの頼りない姉貴から頼りない彼女に、昇格させてくれないかな」
不安を抱えた様子で上目遣いに、おそるおそる、それは告げられた。
「……ダメ、かな」
「ダメなわけないよ」
返事は、考えるまでもなく決まっていた。
「…………一度しか言わないから、よく聞いて」
それは、葬儀の日からいままでずっと、心の奥に閉じ込めていた本音。
「たとえどんな未来が待っていようと、そのときが来るまで璃那のそばにいたい。本当はずっと、そう願ってた」
このときルナが、どんな顔をしたのか。それはわからない。
お互いの顔を交差させるようにルナを強く抱きしめて、目を閉じたまま告げたから。
「…………やっと、言ってくれたね」
返ってきたのは、普段の璃那とは違う、凪いだ海のように穏やかな声だった。あるいはそれが、ルナの地声だったのかもしれない。
「……ごめん」
「ううん。でも……やっぱり、反則だったなあ……」
呟きのようなその言葉のあと。
「え? ぉわっ!」
突然、ルナの体が脱力したように重くなった。