「いいんだってば。気持ちはわかるから、なんて言えないけど……想像はつくから。トキのことだもの、人より死期の早い自分の運命を知って、父さんにあんなこと言われて。きっといっぱい悩んだんでしょ?」
「…………ああ」
それでも俺は、顔を上げられずにいた。
「だったら、謝ることなんてないじゃない。自分の気持ちを押し殺して、自分の想いと裏腹なことを告げるのがどれだけ辛いかは、あたしもよく知ってるわ」
「蒼依ちゃん……」
蒼依の想いを人一倍知っている悠紀が、蒼依に寄り添う。
「それに。璃那姉さんを嫌いになって別れを切り出したわけじゃないってわかって、安心したわ。璃那姉さんもきっと同じだと思う」
そう、なんだろうか……
「そうだよ。蒼依の言う通り。だってわたしがそうだもの。だからほら。お願いだから顔を上げて? トキくんが全部打ち明けてくれたんだから、今度はわたしの番だよ」
「えっ?」
まさかまだ何か隠してるっていうのかと思い、思わず顔を上げると。ルナは苦笑してこう言った。
「まだ何か隠してるってわけじゃないけど、まだ伝えていない想いが残ってるからね」