「言ったわよ。だから教わったんじゃなくて、ルナ姉さんの見よう見まね。案外うまくいったわ」

付け焼き刃を俺で試したのかコイツ。コワいことするな。

《もし失敗して、時空の狭間にでも引っかかったらどうする気だったんだよ》

「もし失敗して異空間に引っかかっても、悠姉が助けに行けるから大丈夫よ」

《だからってな――》

「そんなことより。自分の十八番(おはこ)をくらった感想はないの?」

俺の十八番? ああ……

《中学生で黒帯持ちになった奴に、白帯止まりの奴の背負い投げを十八番と言われても、嫌味にしか聞こえん》

「そりゃあ良かったわ。実際、嫌味なんだから」

《なんだと?》

「だってそうでしょ? 記憶喪失のせいでずっと訊くわけにいかなかった、アンタが璃那姉さんを振った理由が、まさかあんな情けないことだったなんて思いもしなかったんだから。嫌味のひとつも言いたくなるわよ」

…………ふむ。

《情けない、か。確かにそうかもな》

「何よ、自分でも薄々わかってたの?」

《そうじゃない。今ならそう思えるってだけだ》

「本当に? 自分と一緒になっても早々に死別してしまうのが璃那姉さんの不幸だとか、そんな自分じゃダメだなんて勝手に決めつけて。だから身を引いただなんて人聞きのいいこと言ってごまかしてたけど、そんなのただの逃げ口上だったって。そこまで思ってる?」