視界には、青黒い闇の中でまばらに瞬く星たち。

その端っこに、夜露に濡れた草。

「――目が覚めた?」

その冷たさに気がつくと、すぐそばで蒼依の冷ややかな声がした。そこでようやく俺は、自分が芝生の上に仰向けで倒れているのだと知った。

なぜか体が動かないので視線だけ動かすと、メイド姿の人影が月明かりを背負うようにして立っていた。
逆光になって表情まではわからないが、冷ややかな視線を向けられているのを感じる。心なしか、眼光が蒼みがかっているような気がするのは気のせいか。

どうやら俺は、ほんの数秒で丘の上に飛ばされ、蒼依に投げ飛ばされたらしい。

「らしいじゃなくて、事実その通りよ」

コイツはまた、人の心の声にツッコミを……

「黙りなさい」

《黙れもなにも、体が何かに押さえつけられていて口も動かないから、声が出せないんだよ。全部お前の仕業だろ?》

「ええそうよ。〝モメトラ〟であたしとアンタを丘の上に飛ばして背負い投げを見舞ったあと、チカラを込めた視線でアンタを射止めて動けなくしてるの」

蒼依の眼光が蒼みがかっているのは、気のせいではなくチカラがこもっているからだったらしい。しかし〝モメトラ〟でって……

《お前確か、個性が死ぬから教わらないわって言ってなかったか?》