「女医のコスプレをした朱海さんが同じようなコスプレをした悠紀姉たちと一緒に仕事……」

ちょっとその場面を想像してみた。

「……どんな仕事をしていたとしても、三人が母娘(おやこ)であるとわかった人は、おそらく皆無だったでしょうね」

「姉妹だと思ってくれた人がほとんどね。若く見られるのは嬉しいけど、フクザツだわ」

そう言ってる割りには顔がほころんでますね――とは言わなかった。言えなかったというのが正確なところだが。蒼依の母親でもあるだけに、不用意なうっかり発言は、その後の俺の精神衛生のためにならない。

「それはそれとして、本題に戻りましょう。璃那を振った理由を聞かせてくれる?」

「はい。実は――」

そして俺は朱海さんに、葬式のときの話をした。

「――ということがあったんです」

「そうだったの……。風貴くんが兎季矢くんにそんなことねえ……」

朱海さんは、どこか嬉しそうな顔をして何事か呟いたが、よく聞き取れなかった。

しかし訊き返す間もなく表情を硬くすると、俺に問いかけた。

「でも、本当にそれが理由なの?」

「どうしてですか?」

「兎季矢くんは、風貴くんとは違うタイプに見えるから。好きな女を自分が幸せにしようだなんて、自惚(うぬぼ)れてるようには見えないわ」

「自惚れ……ですか?」