麻宮朱海は、璃那たち三姉妹の母にして、俺の知りうる限り、最も強大なチカラの持ち主であり最高の能力者だ。

小柄だが、とても二十代の娘が三人もいるとは思えないほど年若い容貌と容姿の持ち主。

そんな女性が、互いの鼻先が触れ合いそうなほどの至近距離に現れたのだ。普通なら、面食らって言葉を失うところだろう。

「思ったほど驚いていないわね。兎季矢くんなら、絶対豆鉄砲に撃たれたハトみたいな顔をすると思ったのに」

頬を膨(ふく)らませてそう言われた。自分じゃ分からなかったが、このときの俺は無表情だったらしい。

「そんなことはありません。見た目よりは驚いていますよ?」

正確には、あまりのことでどんな反応をしていいか表情に困り、数秒間、言葉を失っていた。

「ただ以前、貴女の愛娘に同じことをされたので、多少の免疫がついてはいますね」

「なるほどね。本当に全部思い出したみたいね」

「ええ。だけどそれを確かめるために、わざとこんな現れ方をしたんですか?」

「いいえ、これはただ、兎季矢くんがどんな顔をするか楽しみだっただけよ。あのときのあの子もそうだったでしょう?」

「そうですね」

なるほど納得。カエルの子はカエル、もしくは――

「この親にしてあの子あり、ってことよ」

「自分で言っちゃいますか」

「事実だからね。それより、さっき言ったことに答えてくれる? それとも、娘たちより母親に先に明かしちゃ何か問題ある?」

「いいえ、問題ありません。ただ……」

「ただ、何?」

「何でそんな恰好なんですか?」