ぱちぱちぱち。

窓の方から小さな拍手が聞こえる。
西條先生だった。

「おめでとうございます。やっと言いましたか。とてももどかしかったですね」

先生はいつもの黒縁眼鏡をかけて立ち上がる。

「僕からみたらお互い好きあっているのはバレバレだったんですけどね」

「え!?」

嘘…先生は私が昴を好きということだけじゃなく、昴の気持ちも気づいていたの?

「さっきドアの前に八木昴くんがいるのに気づいて、咄嗟にああ言ってしまいました。このままだと一生好きだって言わなさそうだったので」

”じゃあ僕と付き合いますか”
あれは昴に言わせるための嘘だったんだ。

「上手くいきましたね。良かったです」

先生はそう言って笑う。

「わりい先生。さっき突き飛ばして。大丈夫だったか?」

「はい。しかしなかなかの力ですねあなたは。さすが柔道部」

先生はお腹のあたりをさすっている。
やっぱりちょっと痛いんじゃ?

「ありがとう先生。先生に相談して良かったよ」

「こちらこそ、柏木美々さんとおしゃべりするの楽しかったですよ。また相談があったら来てくださいね。ああ、あんまり来ると彼がやきもちを妬くので控えめにね」

「おい」

先生と昴のやりとりを見て思わず笑う。
やっぱり先生は変人じゃなくて、優しい人だ。
たまに変だけどね。