辛いよ。
この秘密を抱えるのが、辛い。
でも、言えない。
だって、葉上先生は、この左腕を治してくれた人だから。
頷くことも否定することもしないわたしに、葉上先生は左腕の診察をやめて、先ほどまで看護師さんが座っていた椅子に腰掛けた。
「生きていたくないか?」
「っ、」
それは、違う。
「“あのとき”、助からなければよかったと思ってるか?」
「思ってない!」
問いかけに、食い気味に答えた。
直後、ハッとして、「……です」と弱々しく付け足した。
“あのとき”……クリスマスイブの日、助からなかったら、孤独を知らずにすんだだろう。
生きることもすごく辛くて、絶望感で胸が潰れそうになることもある。
だけど、
生きていたくないと思ったことは、
一度だってない。



