十分ほど経ったころ。
「矢崎さん。矢崎莉子さん」
名前を呼ばれて、指示された診察室に入室する。
中には、わたしの担当医である葉上【ハガミ】先生がいた。
「莉子ちゃん、久しぶり」
「お久しぶりです」
わたしは一礼してから、葉上先生の前にある椅子に座った。
葉上先生は、病院内で人気のある、黒髪がよく似合うイケメン先生。
ちなみに四十歳、独身。
と、初めて会ったとき言っていたのを覚えてる。
「定期検診、来週じゃなかったか?」
「そうなんですけど、昼休みに怪我しちゃいまして」
「怪我?」
わたしは目を泳がせながら、ずっと手で隠していた左腕の傷を葉上先生に見せた。