また握って、感触を確かめた。
どんどんきつく、きつく、握りしめていく。
爪痕が残るくらい握っても、痛くない。
仕方がない。
そういうモノなんだ。
手のひらを広げて、爪痕を右の人差し指でなぞった。
ポツポツ、と雨が降り始めた。
窓に雨雫が伝う。
空がわたしの代わりに泣いてくれているみたいで、ほんのわずかに口角を上げた。
終点の病院に着き、バスを降りた。
病院には定期的に来ている。
来週も来る予定だった。
このバケモノじみた、左腕のために。
病院に入り、診察する順番が来るまで待合室にあるソファに座って待った。