確かに、琴平先生の言うとおりだ。
利き腕がうまく使えないと、ノートもまともに取れない。
「まあ、どうしても教室に戻って授業に出たい!、って言うなら止めないけど?」
教室に、戻る。
考えただけで、血の気が引いた。
いつも以上に敵意に満ちた尖った目つきで、煙たがるかもしれない。
あの噂は本当だと、バケモノ扱いするかもしれない。
戻りたく、ない。
「……いえ、病院に行きます」
「そう?」
今あの窮屈な教室に戻っても、苦痛に耐えられる気がしない。
想像で、こんなに辛いのに。
「いいなー、堂々とサボれて」
皆瀬くんの明るい声色で、ネガティブな思考が止められた。
「皆瀬はサボりすぎ。午後からは授業に出なさい」
「えー」
みんな、皆瀬くんみたいだったら。
苦しまずにすんだのかな。



