皆瀬くんは右頬だけじゃなく、右手も手当てしてくれた。
その手当てがちょうど終わったとき。
保健室の扉が開いて、琴平先生が戻ってきた。
「あれ?矢崎さん、どうし……」
琴平先生は「どうしたの」と聞き終える前に、わたしの左腕に目を留めた。
察した琴平先生は、皆瀬くんに椅子を代わってもらい、すぐに左腕を診てくれた。
琴平先生も、わたしの秘密を知っている。
だから、わたしの左腕から血が出ていないことにも、驚かないんだ。
「この絆創膏は、自分で?」
「いえ、皆瀬くんが手当てしてくれたんです」
右頬と右手の絆創膏を見つめながら、頬をゆるめる。
「皆瀬が、自分から?」
「はい。そう、ですけど……」
「へえ、珍しい」
どうして、琴平先生は意外そうに言うんだろう。
皆瀬くんなら、誰にでもしそうなのに。
皆瀬くんは話を聞いていないフリをして、ベッドに腰掛けた。



