下を向いて、唇を引き結ぶ。
皆瀬くんが優しいからこそ、怖いんだ。
拒まれたときのことを想像したくない。
「大丈夫?」
黙り込むわたしにかけてくれたのは、温かい言葉だった。
瞳を揺らしながら、顔を上げる。
そこにあったのは、わたしを気味悪がる表情じゃなく、わたしを心配してる表情だった。
『大丈夫?』だなんて言葉を、さっきは誰もくれなかった。
わたしを蔑んで、遠ざけるばかりで。
そんな優しさを示してくれる人は、事情を知っている先生たち以外、あの場にいなかった。
「……じゃ、ないよな。左腕、ガラス刺さってるし」
「ううん、だ、大丈夫」
「本当に?」
「うん。ありがとう、皆瀬くん」



