右頬の傷に、消毒液を染み込ませた綿球をポンポン当てられる。
傷の奥までしみて、右目を瞑った。
「さっきすごい音してたけど、何があったの?」
「サッカーボールが飛んできて、窓が割れちゃって」
「うわあ、悲惨だな。他に怪我しなかった?」
「えっと……」
ドキリとした。
生唾を飲み込む。
思い出した、先ほどの野次馬の冷ややかな眼差しに促されるように、右手が左腕のガラスの破片へ動く。
「痛っ」
素手でガラスの破片を抜き取ろうとして、逆に手のひらを傷つけてしまった。
右手から、血が流れる。
でも、やっぱり、左腕からは血はあふれない。
「矢崎さん」
……怖い。
皆瀬くんにも、バケモノだと思われたらどうしよう。
白い目で睨まれたらどうしよう。



