ドクン、と心臓が鈍く高鳴る。 左袖を引っ張って、事実を覆うように左手をできるだけ隠した。 左腕に、温もりなんかない。 痛みなんか、ない。 「おい、あれ」 「なんで……」 野次馬のざわつきが、いやに大きく聞こえるのはなぜだろう。 嫌な予感がした。 「なんで、左腕から血が出てないんだ?」 こんなに深く刺さっているのに。 ほんの少しあらわになっている肌からは、一滴たりとも、鮮血は流れていない。 感触はあるのに、なんの痛みも、感覚もない。 ――これが、わたしの、秘密。