どんな君でも、愛おしくてたまらない。




悪夢のクリスマスイブに起きた、最悪な悲劇が、瞼の裏で再生される。


お母さんとお父さんの声が、幾度となく、大きく響く。



やだ。

思い出したくない。




瞳に涙の膜が張り、かすんでいく視界を埋め尽くすくらいたくさんの桜が、次第に憎い雪に見えてきた。



これは錯覚だ。


今は春。


大嫌いな冬じゃない。




「……っ、嫌!!」



震えた声を発したと同時に、ザア……!と風が強く吹いた。


手にしていた一枚の花びらは、わたしの手から離れて、風に乗り天高く舞っていく。



「はっ、はっ……」



胸元を抑えて、浅い呼吸を繰り返す。


左腕をグッ、と掴んだ。