どんな君でも、愛おしくてたまらない。




思わず独り言を呟いてしまったわたしを励ますように、ひらり、と一枚の桜の花びらが風にそよがれてきた。


目の前でくるくる回りながら、足元に降りていく。



わたしは可愛らしい花びらを手に取って、道の脇にある小さな公園に顔を向けた。




この公園は、“あのときの少年”と出会った場所。


相変わらず人気のない寂れた公園だけど、真ん中にある大きな桜の木は美しく咲き誇っていた。



遅咲きの、桃色の桜に見惚れる。




そういえば、“あのときの少年”を見た前日に、桜の木があまりに綺麗だったから桜の木を背景に家族みんなで写真を撮ったっけ。



また、みんなで写真を撮りたかった。


また、“あのときの少年”に会いたかった。




涙ぐみながら桜を眺めていると、





『莉子っ!!』





最後に聞いたお母さんとお父さんの必死な声が、耳の奥をつんざいた。