ある場所――霊園に到着し、中に入る。
整然と並んでいるお墓の前の道を通り、その列の一番左端のお墓の前で立ち止まった。
「久しぶり、環くん。会いに来たよ」
三年前、環くんは天国へと旅立った。
いつ死ぬかわからない病と最後の最後まで闘い続けた環くんを、ずっと近くで支えてきた。
まだ完全には環くんのいない世界を受け入れられていないけれど、娘と共に精一杯生きている。
「お父さん、ここに眠ってるの?」
「うん、そうだよ」
娘と同じ目線になって頷くと、娘はパアッと表情を明るくする。
「お父さ―ん!百花【モモカ】だよ!!」
百年先も、桜の花みたいに綺麗に咲くような、素敵な“今”を送れますように。
そんな願いを込めて、娘を「百花」と名づけた。