十年後、春。






桜が咲き始めたころ。


わたしは白い花束を抱えて、ある場所に向かっていた。



澄み渡った青空が、眩しい。


昨日は雨だったから、いい天気になってよかった。




「お母さん、早く早く!」


「はいはい」



娘にスカートの裾を引っ張られ、困ったように返事をする。



娘はこっちの道で合ってるか、振り向いて聞いてきた。


わたしは合ってるよと、穏やかに微笑む。




娘は、今月末に迎える誕生日で五歳になる。


来年は小学生だ。



時が経つのは早いな。