不意に、凝視しすぎていたのか、皆瀬くんと目が合ってしまった。
「っ!」
やばい!
ハッとして、すぐ目をそらす。
どうしよ。
変に思われちゃったかな。
ぐるぐる不安が渦巻けば渦巻くほど、心拍数が上がっていく。
自然とまた下を向いている自分に気づいて、肩を落とした。
すると、チャイムが鳴って、教室の前のほうの扉から担任の冬木【フユキ】先生が入ってきた。
立っていたクラスメイトが、慌てて席に着く。
「おはようございます」
冬木先生の第一声に、みんな一斉に挨拶を返す。
冬木先生は、この学校で一番年上のおばあちゃん先生なのに、声が若くて綺麗で、みんなに親しまれている。
わたしはぼんやりと冬木先生の話を聞きながら、もう一度俯きがちにこっそり皆瀬くんのほうへ視線を移した。



