左の手のひらを、八年前の写真が入っているポケットに、スカートの生地越しに当てる。
またしても、逃げようとしてる。
もう逃げない、逃げたくないって、あれほど後悔したのに。
情けないな。
「あっ、そうだ、あのね!」
俯くわたしに、依世ちゃんが明るく話しかけ、自分のカバンから何かを取り出した。
その何かを、わたしに差し出す。
「はい、これ!」
「これって……クッキー?」
可愛くラッピングされた透明な袋。
その中には、おいしそうなクッキーが入っていた。
「これを、わたしに?」
「うん!昨日作ったの。莉子にどうしてもあげたくて」
「なんで?わたし、別に今日誕生日とかじゃないよ?」



