どんな君でも、愛おしくてたまらない。




恐る恐る顔を上げ、窓際の一番うしろの席に視線をずらす。


その席にちょうど、今教室にやって来た彼が座ったのが、前髪の隙間から見えた。



彼のあとに教室に入ってきた男子が、席に移動するがてら、彼に挨拶する。



「はよ、皆瀬」


「おはよ」



彼の名前は、皆瀬 環【ミナセ タマキ】くん。



皆瀬くんはいつも笑顔で、誰にでも優しくて。


少し幼げな顔立ちとは裏腹に、とても大人びている。


大体一人で行動してるけど、わたしとは違って、誰ともつるまずに一人でいることを好んでいるように思う。



わたしとは正反対。




そんな皆瀬くんは、中学三年生になると同時に転校してきたわたしが、一番最初に名前を覚えた人。



一度も喋ったことはないけど、顔を見た瞬間びっくりした。


気になって仕方がなかった。



だって、皆瀬くんは――。