「どうして、ですか?」
「ん?」
「どうして、幸せだったって言い切れるんですか?」
純粋に、知りたかった。
悲しい最期だったのに、今こうやって朗らかに話せているわけを。
「“今”を精一杯生きたからだ」
葉上先生は、答えに迷うことなく真っ直ぐに応えた。
「そのせいですれ違ったり、苦しんで泣いたりもしたが……うん、やっぱり、そういう後悔も含めて、幸せだったよ」
あぁ、わたしも、こんなふうに言いたい。
逃げて、すくんで、もがいた日々を全て力強く抱きしめながら、幸せだ、って。
胸を張って言えるようになる日が、わたしにも来るのかな。
「莉子ちゃんも、」
葉上先生の骨ばった手が、わたしの頭を優しく撫でた。
「“今”を精一杯生きろよ」